おっさんが百合漫画「やがて君になる」を2周読んだのでレビュー

たまゆら

この作品を単純に “百合漫画” という言葉で括ってはいけない

「やがて君になる」という漫画を読みまして。

ジャンルとしては百合、ガールズラブ、つまり主人公もヒロインも女の子の恋愛物ですね。ついでにライバルも女の子。

初めて触れるジャンルだったのですが、これがまぁ大変素晴らしかったのでレビューです。

ちょっと言葉が失われるほど良かったです。

はぁ〜〜〜〜〜…何書こうかな……

この作品をネタバレ気にしつつ語るのはちょっと難しいのですが、というか無理ですが、いやでも極力ネタバレは避けたいと思いますが、それでも何かを吐き出さずにはいられなかったので既読の方も未読の方もお付き合いいただけますと。

言ってしまえば百合要素はどうでもよくて「人が人を好きになるという事はどういう事か」という哲学を取り扱う作品だと感じました。

目次

「やがて君になる」とは

「月間コミック電撃大王」という漫画雑誌で2015年〜2019年まで連載。

電撃って懐かしいなぁ。電プレには随分お世話になりました。ゲーム情報はもちろんブギーポップとかも読みましたねぇ。何もかも皆懐かしい。

単行本は全8巻で完結、累計発行部数は100万部を超えているとの事。

更にはテレビアニメ化や舞台化もされています。

え、凄くない?

漫画業界の事は詳しくないですが、この時代に一般的にはニッチと思われるジャンルで一般的にはニッチと思われる電撃で100万部売れてアニメ化に舞台化って凄まじいのでは?

いや、それほどの魅力がこの作品にはあります。

登場人物紹介

ざっくり主要人物だけ。

他にも魅力的なキャラクターはいますが長くなりますし脱線するので割愛。

小糸 侑

主人公で高校1年生で “好きが分からない” 女の子。

髪型がラムザ。

誰かを特別だと思った事がない、クールなイケメンキャラ。

その特殊な性格ゆえに2年生の先輩から言い寄られる事に。

誰かを好きになるという感情を手に入れてみたいと願い、そしてその願いが叶った故の葛藤、からの急転直下。

かわいいんだわ、マジで。

基本的に恋愛漫画って主人公がヘタレでそこから成長する物語が描かれがちですが、この主人公は最初から結構強いしマジイケメン。

しかし抱えているものももちろんあって、最終的にはしっかり成長します。

ウダウダやる主人公に食傷気味だったので小糸さんは本当に魅力的に映りました。

七海 燈子

ヒロインで高校2年生で “好きを拒絶する” 女の子。

優等生を演じきっているが根は臆病でポンコツ。

周囲のあらゆる人間に好かれるが、素の自分に自信が無いため好意を向けられる事自体を嫌悪してしまう。

そんな中で「誰も好きにならない」という小糸さんに惹かれていきます。

「私の嫌いなものを好きって言ってくる人のこと好きになれないでしょ」

かわいいんだわ、マジで。

これがああなるのですから、ある意味主人公よりも主人公しています。

先輩なのにデレデレ、先輩なのにポンコツ、でもたまにかっこいい事を言う。

なるほどねぇ、そういう事ねぇ。

……いいですねぇ。

佐伯 沙弥香

ライバルポジションの高校2年生の女の子。

名言製造機。

かわいいんだわ、マジで。

ただ邪魔をするだけのライバルではない、この作品は佐伯先輩がいないと成り立たない、そんな風格さえあります。

所感

好きという感情を知らない主人公。

自分の事を好きになってほしくないヒロイン。

だからこそヒロインは主人公を求める。

両者の複雑な感情が絡み合いながら昇華される関係性。

いわゆる「尊い」だけの枠には収まらない、かと言って安直に泣かせにくるわけでもない、初めての読後感でした。

私マンガでもアニメでも結構簡単に泣いてしまうのですけど、この作品は涙一滴落ちませんでした。

それでも満足感がエグい。

それほど特別な、かけがえのない作品に出会えたと思っています。

恋愛漫画は、障害というバネをどれだけ溜めるかだと思います。

溜めるほど障害が取り除かれた際の感動も大きくなりますが、溜めすぎればダレますし見せ方が悪ければイライラもします。

この作品はそのバネのバランスが素晴らしい。(ドメカノはバネが壊れていると思います)

全8巻と短いお話ながらも、登場人物が少なく、また主人公・ヒロイン・ライバルの心理描写が非常に丁寧なため読者置いてけぼりのぶっ飛んだ展開にもなっていません。

寄り道をせず真っ直ぐに主人公&ヒロインの抱える問題と成長を濃密に描ききっています。

物語の構成や表現力もさることながらサブタイトルも非常に考えられており、作者のセンスには脱帽するばかりです。

「女の子同士がイチャイチャするだけの漫画」だと思ったら大間違い。

あまりにも素晴らしい作品だったので言語化が難しいのですが、胸を張ってオススメ出来る逸作です。

あと単純に絵柄が好きすぎる。

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