ペルソナ5がシミュレーションになった「ペルソナ5タクティカ」をトロコンしてレビュー

たまゆら

心の焔とはいったい

超人気RPGペルソナ5の関連作品はいくつか出ていますが、こちらはシミュレーションRPGです。

その名も「ペルソナ5タクティカ(以下P5T)」。

えー、あのペルソナ5がシミュレーションってもう間違いなく面白いでしょ。

FEみたいなのかな?スパロボみたいなのかな?まさかFFTみたいな感じ?どれも大好物です。

というわけでゲーム屋さんにダッシュ。2,000円也。

サブクエスト的なものを全制覇しつつ1周目ストーリークリアまで26時間、2周目10時間の合計36時間でトロコン出来てしまいました。

短っ。私のちんちんかよ。

目次

P5Tとは

2023年11月にPS4/PS5/Xbox/Switch/PC(Steam)から発売されました。めちゃ最近っすね。

2024年現在のペルソナ5シリーズ関連作品としては最新作です。

売上は調べてみたのですが、イマドキのゲームって色んなハードで出てDL販売やらもあってよく分からないのですよね。

初週のSwitchパッケージ版が3万弱、PS5パッケージ版が1.5万、PS4パッケージ版が0.8万という情報は見つかったので、まぁ本編ペルソナ5の300万本オーバーという売上の足元にも及ばないのは間違いなさそうです。

本編が2016年発売ですからね…7年後にまた関連作品を出してもねぇ…いつまで擦っとんねんという感じはします。

ゲームシステム

同じ本編の関連作品である「ペルソナ5スクランブル ザ ファントムストライカーズ(以下P5S)」は本編の戦闘部分をアクションに置き換えて他システムは本編と似た感じでしたが、P5Tはかなり様相が異なります。

デフォルメされた絵に、まさかの街やフィールドやダンジョン無し。

立ち絵紙芝居で進む一方通行ストーリー → 準備画面 → シミュレーションバトルの繰り返しです。

スパロボやFEと同じシステムですね。

ストーリーを読み進めて
アジトで準備して
ステージ形式の戦闘開始

戦闘について

大まかなイメージはこちらもスパロボやFEと同様、自軍全キャラが行動した後に敵軍全キャラが行動するというもの。

そこに本編ペルソナ5で特徴的だった1MOREや総攻撃やカバーといった要素が再現されています。

P5Tはこんなシミュレーションゲーム
  • 近接攻撃・銃攻撃・ペルソナスキルで攻撃可能
  • 物陰に隣接するとカバー状態になって防御力アップ
  • カバー状態でない敵を攻撃すると敵がダウン & 1MOREで再行動可能
  • ダウンした敵を味方で囲むと範囲内の全ての敵に総攻撃
  • 行動(攻撃やスキル使用)するまで移動し放題

カバーが攻守ともに非常に重要。

カバー状態の敵は近接攻撃orペルソナスキルで攻撃するとカバーを剥がす事が出来ます。

殴って敵のカバーを外す → 違うキャラで攻撃してダウン&1MORE → 敵を多く巻き込めるようにキャラを移動させて総攻撃、というのが基本的な戦法になります。

総攻撃で範囲内の敵をまとめて撃破

そしてもう一つ大きな特徴が、行動(攻撃やスキル使用)するまで好きなだけ移動出来るという点。行動するまで操作キャラチェンジも好きなだけ出来ます。これを前提としたギミックが大量に登場します。

文章だとよく分からないと思いますが、実際に触ってみればそこまで複雑ではありません。

ペルソナ要素について

肝心のペルソナ要素について、合体はありますが会話交渉はありません。ステージクリアの報酬としてペルソナを入手します。

ペルソナを装備すると、従来通り「ステータスの上乗せ」と「ペルソナが所持しているスキルが使用可能」という面でキャラが強化されます。

「耐性」という概念はありません。マジかよ。

またペルソナの所持スキルは1種類のみで、継承で+1種類だけ持てます。マジでか。

スキルはまさかの2種類しか所持出来ず

ジョーカーのアルセーヌやモナのゾロ等は固定のメインペルソナとなり、それとは別にサブペルソナとして2体目を自由に装備する事が可能になっています。

ストーリー

本編終了直後、真や春が卒業する直前。

ルブランに集まってダラダラしていた怪盗団一行、突如異変を感じて外に出てみると異世界に飛ばされます。

飛ばされた異世界は暴虐な支配者と搾取される民で成り立っており、なんかよく分からないけど悪いやつは許せんからやっつけるぞーというお話です。

最終的には本編やP5Sと似たような重めのストーリーになってくるのですが、デフォルメキャラなので演出としてはギャグ調のノリが強めになっています。

登場人物紹介

主人公 (ジョーカー)

もはやボケる事でしか存在感を主張できないほど影の薄くなった主人公。

でも相変わらずモテモテ。何故だ。

竜司 (スカル)

他メンバーのボケ体質が増しているので常識人のツッコミキャラに。

性能的には開幕から全体3ターンタルカジャのオートマハタルカが超便利。

モルガナ (モナ)

ネコでもタヌキでもなくナマズに間違われる始末。

ナマズは厳しくなぁい?

回復スキル持ちで移動力も高めという事でシミュレーションゲーム的には大活躍しそうですが、そもそも難易度Normalだと回復スキルを使う機会がほとんど無いので。

杏 (パンサー)

鞭タイツと棒演技っぷりがイジられたくらいであとは影薄かったですね…

戦闘面ではマハタルカジャを覚えるので長期戦になる場合は竜司よりも便利だったりします。

メイン攻撃のアギ系は追加効果がパッとしませんが威力や範囲は上々。

祐介 (フォックス)

ストーリー的にも性能的にももはや主人公では?というくらい出番があります。

まぁキャラクターが立っているので物語上で使いやすいですものねぇ。

開幕から3ターン全体の移動力をアップさせるオートマハスクカは快適攻略には必須級。

更にブフ系は食らった敵が1ターン行動不能(成功率100%)という、シミュレーションゲームにあるまじき超性能になっています。

真 (クイーン)

新キャラが作戦参謀役として立っているため、世紀末パイセンは世紀末パイセンとしての扱いが多めでした。

フレイ系は広範囲の敵を巻き込んで中央に集めるという効果で一見便利そうに見えますが、広いマップにポツンポツンと敵が配置されている場合が多いのでどうにも活躍しづらいです。

春 (ノワール)

序盤こそストーリー的な見せ場がいくつかあったものの、全体を通すとかなり不遇だったような。

特に性能面では厳しく、移動力が低いのがシミュレーションゲームとしては致命的。

スキルも敵をこちらに引き付けるサイ系、状態異常を治すディア系と、どちらも微妙。悲しい。

双葉 (ナビ)

新キャラとの絡みが多いため必然的に出番も多かったように思います。

相変わらず戦闘には出撃不可ですがサポートはしてくれます。

ラヴェンツァ

P5Sに引き続きイゴールが不在のためベルベットルームの管理人に。

本作では合体以外にもちょいちょいストーリーに顔を出してきます。

ノリノリでボケるラヴェンツァ殿を見られるのはP5Tだけ。

エル

新キャラその1で異世界の住人。

圧政に苦しむ民のために立ち上がった革命軍のリーダーです。

正義感が強く、素直で気さく、若干天然なところもあれどリーダーシップに優れると、誰からも愛されるであろうキャラ。

自分だけペルソナが使えないため、一人隠れてペルソナを出す練習をするようなお茶目さん。

ジョーカーからは「巻き舌が足りない」と突っ込まれます。

統志郎

新キャラその2で、現実世界から異世界に迷い込んだ時期総理大臣候補の若手議員。

本編で起きた一連の改心事件は把握しており怪盗団の事を快く思っていませんが、現実世界に帰るために怪盗団と行動を共にする事に。

大人としてリスクヘッジを考えた行動を取る事が多く、学生怪盗団にヘタレだの豆腐メンタルだの散々煽られます。

ここが凄いぞ P5T

  • シミュレーション不慣れな人にも優しい難易度
  • 本編にいないペルソナがいる
  • 一枚絵が豊富、ギャラリーでも閲覧可能
  • 原案やボツ案も閲覧可能

シミュレーション不慣れな人にも優しい難易度

「ペルソナを知らないシミュレーションガチ勢」と「シミュレーションを知らないペルソナガチ勢」のどちらがこのゲームで遊ぶかと言ったら後者の方が多いでしょう。

そのためシミュレーションゲームとしての難易度は優しいです。

敵の行動範囲をチェックしてー硬い味方で引き付けてー反撃できない距離から削ってー育てたいキャラでトドメを刺す、なんてそんな基本的な戦術すら不要で、カバーさえしていれば適当に突っ込んで適当に攻撃しているだけでもクリア可能です。(難易度Normal)

少し慣れてくるとダウンからの総攻撃というP5T特有のシステムも使いこなせるようになってきて、これがまた爽快感があります。

各ステージには目標クリアターン数が定められているのですが、総攻撃を利用すると目標の半分くらいのターンでクリア出来る事もあり、なんだかゲームが上手くなったようで気分が良いです。

本編にいないペルソナがいる

過去ペルソナシリーズで活躍したペルソナやクトゥルフ神話のペルソナが追加されていたりします。

ハスターなんてペルソナ2で見かけたような気がしますけどそれ以外だと出ていないような?

ただしリストラされているペルソナもいて、ご立派様は未登場だったり。何故。

一枚絵が豊富

基本的には立ち絵の紙芝居でストーリーが進むのですが、要所要所でオサレな一枚絵が挿入されます。

これが結構な数があってなかなか良きです。

これらの絵はメニューから再閲覧が可能で、またクリア後特典になりますが原画やボツ画もあったりします。

ここが残念 P5T

  • ゲームとしてペルソナ要素が薄い
  • シミュレーションゲームとしても浅い
  • ペルソナ5の後日談とは言いづらいストーリー
  • サブクエストの詰将棋感がエグイ
  • BGMが盛り上がりに欠ける
  • 30時間ちょっとでトロコンまで出来てしまうボリューム

これは本当に「ペルソナ」か?

属性も耐性もありません。耐性を意識しなくてもクリア出来るという意味ではなく、概念として存在しません。

ペルソナの所持スキルが1個(+継承で1個)しかありません。ペルソナのレベルが上がっても新たにスキルを覚えたりしません。

ペルソナを合体させても挨拶してくれません。

ペルソナスキルを使ってもそのペルソナは画面上に表示されません。

というわけで、各ペルソナの個性は死滅して、自分が今どのペルソナを付けているのかすら意識せずにプレイしていました。

ペルソナの種類自体は豊富ですがマジで無意味。ランダを付けていても物理攻撃を普通に食らいます。図鑑を埋めるだけの存在でしかありません。後半ペルソナを付け忘れて生身で出撃してしまった事がありましたけど、若干苦労したくらいで普通にクリア出来ましたし。

ペルソナ全書の解説はありますが、ペルソナの絵がアニメーションせず上下にフワフワしているだけでカメラも回転出来ないってのもどうなの。3Dモデリングじゃなくてただの絵なのですね。手抜き感がエグイ。

敵の存在も酷いです。よく分からないオリジナルの汎用モブキャラと延々戦わされる。このゲームに悪魔は一体も出てきません

シミュレーションゲームとしてのクオリティの低さ

超基本的な話としてカメラワークが悪いです。

高低差や壁やギミックが豊富でゴチャゴチャした3Dマップなのにカメラを引く事すら出来ず、後半になると誰がどこにいるのかすら分かりません。

加えて、スイッチを押すと開いたり閉じたりする扉、上がったり下がったりする昇降機、あっちのスイッチを踏んでこの扉を開けてその間に別のキャラを進ませてこっちのスイッチを踏んで…あぁ今度はこっちが閉まった…こんなギミックばかり。

そんでもってカメラワークも悪いので大変シンドイ。難しいではなくてシンドイ。シミュレーションゲームってそういうものでしたっけ。

味方キャラの性能という意味での差別化も出来ていません。

防御力の概念が無くHPもほとんど横並びなので耐久力はどれを使っても同じ。火力もそこまで差はありません。

スキル面と移動力で差別化が図られていますが、優秀なスキル持ちはずっと優秀だし移動力が高いキャラはずっと便利。

キャラ毎のレベルという概念すら無いので、お気に入りのキャラを強化したりする事も出来ません。

敵の種類も少なく、最初から最後まで6種類しか出てきません。

攻撃するだけの歩兵、サポーター、カウンター持ち、シールド持ち(レア)、敵をこちらに投げてくるやつ(レア)、攻撃すると場所が入れ替わるやつ(超レア)、これだけ。

この敵にはこのキャラが有効とか、このステージだったらこのキャラが活躍出来るとか、そういった要素はほぼありません。

アーチャー相手ならナイトで一気に隣接して囲むとか、アーマー相手なら魔法で攻めるとか、ペガサスナイト相手ならスナイパーで「ぐはっはっは、おもしろいように落ちる」ごっこするとか色々あるじゃあないですか。

なんも無い。

ダウンさせて総攻撃するだけ。もしくはブフで固めるだけ。

属性や耐性がなく、敵の種類が少なく、味方は3人しか出撃出来ず、敵も味方も差別化が甘い。これではシミュレーションゲームとして深くなりようがありません。

シミュレーションゲームはプレイヤーの工夫とこだわりが刺さった時に快感を得られると個人的には思っているので、そういった点では評価出来ません。

まぁね、前述の通りシミュレーションファンではなくペルソナファンに向けたゲームでしょうからその辺のバランス調整は難しいと思いますけどね、だったらもっとペルソナ感を押せと。

更に細かい事を言うと、敵を倒せるダメージで攻撃しようとすると事前にマークが表示されるのですが、マークが表示されているのに倒せないという事が頻発します。

ダメージの計算式に結構な乱数が組み込まれているようです。シミュレーションでそれはいいのか。

あと意味も無く敵の増援が出てくるステージが多すぎです。「○○ターン内にクリアしろ」という追加ミッションが設定されているのにいつどこにどれだけ増援が出てくるのか分からないのは結構なストレス。ストーリー上増援が出てきてもおかしくないステージなら構わないのですけどそうじゃない。とにかく適当に増援が出てきます。

それからこれは個人的な話ですが、戦闘中に中断が出来ません。冗談かと思いました。

え、中断無いよね?色々確認しましたけど無かったと思います。

一人で遊んでいる人は本体スリープしとけばいいじゃんという話ですが、うちは家族もプレステを使うので泣く泣くセーブ出来ずに代わった事が2度ほど…SFCのスパロボだってFEだって中断セーブはあるぜ。

ペルソナ5の後日談とは言いづらいストーリー

ペルソナ感は薄い、シミュレーションゲームとしても微妙、ではキャラゲーとしてはどうなのかストーリーはどうなのか。

残念ながら怪盗団は脇役です。

ネタバレ含むので折り畳み

最初から最後まで新キャラである統志郎の成長物語です。

父親が国会議員で小さい頃からスパルタ英才教育を受けさせられてきた、次期総理大臣候補として望まぬ政略結婚を強いられている、幼い頃に自分のせいで母親を亡くした、学生時代に生徒会長をやっていたら全生徒からボロクソに叩かれた、そんな心のトラウマが作り出した認知世界で、統志郎が勇気を出して過去を一つずつ乗り越え自分を取り戻していくというお話。

怪盗団は何故かそれに付き合わされているだけのお手伝い役です。

いやいや新キャラがメインというのは百歩譲っても、この生い立ちのキャラに感情移入出来る人がどれほどいるのか。

そして世界観も狭すぎます。

本編やP5Sは世界を救う物語でしたが、P5Tはおっさん一人の心の中で話がクローズします。

敵も全て統志郎の心が生み出したトラウマのイメージ。

仮に敵に負けてしまったとしても、統志郎以外誰も困らないし誰にも影響を与えないんだよなぁ。

怪盗団の戦う理由が「なんか目の前に悪いっぽいやつがいるから。あとはよ帰りたいから」しかありません。

まぁ本編も突き詰めてしまえば「目の前に悪いっぽいやつがいるから」かもしれませんが、P5Tは自分たちで決めたのではなく流されている感が半端ではありません。

と思ったらラストで唐突に始まる「神様が大衆の望みを叶えるためにやった」といういつものやつ。

それにしたってなんで一国会議員の心の中で暴れてるのよ。

スケール小さすぎるでしょう。

動画

オープニングから適当なところまで。

総評

スピンオフ作品や地続きの続編って大抵微妙なクオリティになるものだと思っていました。

うん、まぁそうよね。そんな感じ。

P5Sの出来が想定より良かっただけで、本来スピンオフなんてこんなもんでしょう。

それにしても誰に向けたゲームなのか。

ペルソナ要素も怪盗団要素もシミュレーション要素も、何もかもが薄いです。

ゲーム性もストーリーもビジュアルもボリュームも、何もかもがカジュアルでライトでこじんまりとしています。

カジュアルでライトなゲームが存在している事は悪い事ではないですよ。

しかしこのゲームをプレイするのはペルソナやメガテンが好きな人が多いわけで、さてそんな人たちがカジュアルでライトなゲームを期待していたのでしょうか。

クソゲーとは言いません。

しかし申し訳ないですが「2023年に発売された定価8,000円のペルソナ5の名を冠したゲーム」としては完成度が低いかと。ペルソナファンの足元見すぎと言わざるを得ません。

本作がブッ刺さるのはラヴェンツァ殿ファンですかね。

もしくは学生時代は生徒会長で、現在は時期総理大臣候補の若手議員で、父親も国会議員で英才教育を受けていて、小さい頃に母親を亡くしているという人もハマると思います。

総評は「どんな形でもいいからペルソナ5成分を摂取したいという方は検討してみてもいいかも。3,000円前後ならまぁアリ」です。

多分もっと安くなると思いますけど。

いやぁしかしペルソナでシミュレーションって題材は最高なのになぁ…世の中なかなかうまくいかないものです。

せめて、せめて敵が見慣れた悪魔だったらまだ…

本作のトロフィーコンプリートガイドはこちらです。

本編ペルソナ5のレビュー記事はこちらです。

本編のアクションスピンオフ、P5Sのレビュー記事はこちらです。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

目次