雷鳴にも似た喧噪の中、それは沈黙を貫いていた。
煌びやかな情景を前にして尚、それは色彩を持とうとしなかった。
しかし、砂の器は静かに、そして確実に、その刻を削り始める。
在るべきところに辿り着くために。
遥カナル世界ガ穿タレル。
生きるか死ぬかの刹那でさえ、それは価値を見い出せなかった。
囚われの部屋でかじかんだ手を見つめ、我願う、我乞う、我祈る。
縛られし魂が解き放たれん事を。
愛の言葉を囁いた。
さよならしようか ― 純白たる世界に。
さよならしようか ― 夢過ぎ去りし日々へ。
やがて時は満ちる。
やがて生きる意味を問いかける。
星が瞬く虚空の向こう、溢れ出る月の涙は意味を失い。
そして草木と眠りて再会の時を待つ。
木漏れ日の差すあの丘で。
ちんちんの話です。
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